そして3本目に森岡弘さんが選んだのは、ゼニス「ニュー・ヴィンテージ1969」。モデル名の由来はゼニスの傑作ムーブメント、エル・プリメロ発表40周年を記念したもので、ムーブメントの優秀性もさることながら、微妙なカーブをもつ風防と、直線基調を上手に使った小ぶりのSSケースが魅力的に見える。
「ニュー・ヴィンテージ1969に着目したのは、古典的なデザインをフレーバーとして採り入れていて、現代性との合わせ方の加減がじつに好ましいからです。強すぎる主張はいまのファッションでは敬遠されがちなように、この腕時計は着用するひとのセンスで、モダンにも見えるし、オーセンティックにも見えるはず。それを自分では“まとめる力”と呼ぶのですが、そのセンスがあるひとは、服が主張しすぎず、とてもいい雰囲気で自分を見せることができるのですね。乗り心地がよさそうとかオーセンティックな価値をもちつつ、ダッシュボードの造型や表皮などには現代的な要素を採り入れて、クラシックにはならない、そんなブレイドにも通じるものがあると思います」