ストライプのボタンダウンシャツにデニム。いかにも建築家といった雰囲気はない。でもその何気ないスタイルが彼らしさの表現だということに、インタビューを終えてから気がついた。
「だいたい常に大小あわせて10件前後のプロジェクトを抱えています。全部自分で目を通して進めたいので、あまり多くなり過ぎないようにしているんですが、それでも週末も含め、ほぼ毎日仕事をしていますね」
ショップやオフィス、住宅からプロダクトまで、さまざまな仕事を手がける建築家・荒木信雄。
前回登場した康井義貴がCEOをつとめる、Origamiのシンプルだが居心地の良いオフィスを手がけたのが彼だ。
忙しく、国内外を飛び回る彼に『いちばん好きな時間』をたずねたところ、少し意外な答えが返ってきた。
「打ち合わせがドタキャンになったり、ちょっとした空き時間ができたら、近所の喫茶店にサボりに行くんです。渋谷の事務所の近くだと、4軒ほど気に入っている喫茶店があって、気分によってどこに行くか決めます。たまには、代々木公園にあるテーブルで過ごすこともあります。自分にとって、ふと訪れるこの“隙間の時間”が気分を切り替えるいい“余白”になっている気がします。だからといってドタキャンが嬉しいわけではないですけど(笑)」
喫茶店に持っていくのは、財布と携帯とノートと鉛筆、そしてタブレット。「サボり時間」と言いつつ、喫茶店で考えているのは結局、仕事のことだ。