モンブランのヘリテイジ クロノメトリー コレクションを取り上げるのも3度目になりますが、それだけ現在のモンブランの新作は強力であり、様々な意味で魅力に満ちています。
良い時計とはどんな時計のことを指すのか、という問題は、時計に何を求めるか、という問題と類似しています。
すなわち人それぞれ違うもの、というのが最も公平な回答ではないかと思いますが、ここに取り上げる時計の多くは、個人的見解として多くの人にお勧めでき、かつ「買える価格」のもの、という条件に合うものであり、ここ最近のモンブランのプロダクトたちこそ、まさにそうではないかと思えるのです。
これも何度か触れてきたとおり、現在のモンブランを率いるのは、ジャガー・ルクルトのCEOを長らく務めてきたジェローム・ランベール。
このヘリテイジ クロノメトリー コレクションに見られるデザインや構成は、ジャガー・ルクルトのマスター コントロール コレクションに共通する部分を多々感じます。
しかしながら、ジャガー・ルクルトではインハウス ムーブメントを、モンブランではエヴォーシュベースのムーブメントを使用することで、住み分けを行っているように見えます。
もちろん、筆記具ブランドとして世界中で最も輝かしい名声を得てきたモンブランが「簡単なもの」を作るはずもなく、その多くは独自で開発したモジュールを搭載するなど、すばらしいオリジナリティを備えているのです。
これはもちろん、このヘリテイジ クロノメトリー デュアルタイムにも共通しています。
41ミリ径、厚さが9.9ミリのケースは、重過ぎず、長袖のシャツに難なく収まる、装着感に優れるもの。
細いベゼルと広い開口部、ドーム型サファイアガラス、鋭くインデックスに刺さるソード型針、そしてサンバースト仕上げのマットシルバーダイヤルは、クラシックで機能的。
独自開発のデュアルタイム機能は、ホームタイム、ホームタイムの24時間表示、ローカルタイム、ローカルタイムの日付を表示し、ホームタイムの時刻をブルーの針、ローカルタイムの時刻をロジウム仕上げの針で表示することで高い判読性を実現。
デュアルタイムが不要の際は、パテック フィリップのトラベルタイムと同様に、ホームタイム表示の短針がローカルタイム表示の短針とピッタリと重なって姿を消すことが可能です。
またローカルタイムの切り替えはリューズを1段目まで引いて回すことで行いますが、その際長針や秒針を止めることもなく、ストレスなく行うことが可能。
このデュアルタイム機構は、数あるGMT機能の中でも最も利便性の高い機構のひとつであり、表示上の面白さで人気のあるワールドタイマーとは対極の、実用性の高いものと言うことができるでしょう。